interview

―国産のウルトラシリーズが途絶えていた時期、彗星のごとく登場した作品という印象があるのですが、そもそもどういった経緯で始まった企画だったんでしょうか?

瑳川:元々、カードダス用の企画だったんです。あの頃、ちょうどSDガンダムが流行ってましたけど、特に“騎士(ナイト)ガンダム”が売れてたんですよ。当時のナンバーワンSDキャラクターでした。しかも、あれはカードダスによる展開がメインで、(原作アニメに囚われることなく)ストーリーを作っていけるという企画だったんです。だからカードダスさんとしても、さらにそういうものを立ち上げたいという考えがあった。で、僕のところに企画アイデアの依頼がありまして、今度はウルトラマンをSD化することになったんです。既に『仮面ライダーSD』はありましたからね。

―なるほど。でも普通のSDウルトラマン自体は、『ウルトラマン倶楽部』として存在してましたよね。

瑳川:ええ。だから、それまでのSDウルトラマンにはないオリジナル要素、要は騎士ガンダムにおける『ドラゴンクエスト』のようなものがあったほうがいいよねということになり、そこで『ドラゴンボール』と『聖闘士星矢』が出てきたんです。つまりウルトラマンが聖衣(クロス)をまとって、天下一武道会で戦うという(笑)。

―追加のオリジナル要素のアイデアとして、『ドラゴンボール』と『聖闘士星矢』以外に提案されたものはあったんですか?

瑳川:そこに関しては、特に悩まなかったですね。SDガンダムも、騎士ガンダム以外にいろいろとあったので、もう武者ウルトラマンみたいなことはできないわけですよ。意外と逃げ道がなかったんです(笑)。あと、前々から『ウルトラマン』とジャンプ漫画は相性がいいんじゃないかなと思ってたんですよ。日本人って、『ウルトラマン』の影響を受けて作家になってる人が多くて、どこまで行っても『ウルトラマン』の発想から逃れられないようなところがあるんです。実際、『ドラゴンボール』を観たり読んだりしているとわかると思うんですが、パワーアップにパワーアップを重ねて最終段階になっても、孫悟空は空を飛んで光線を出してテレポーテーションをして……実はウルトラマンよりもすごいことはやってないじゃないですか。まぁ、破壊力こそ悟空は桁違いですけど、悟空にできることは、ウルトラマンにも全部できちゃう。ウルトラマンの能力って、日本人の考える最高値なんですね。

―そうなると『聖闘士星矢』は? プロテクターを除くと、ストーリーやキャクターなどに共通性があまり見られない気がします。

瑳川:『聖闘士星矢』って、聖衣が継承されていったり、聖衣が聖闘士(セイント)よりも格が高いように描かれていますよね。でも今回はそうじゃなくて、聖衣自体は装着するんだけど、『聖闘士星矢』よりも『ドラゴンボール』的なものをメインのイメージソースに据えたほうが、『ウルトラマン』の世界観には合うんじゃないかな、と。

―まず鎧ウルトラマンありきで、そこから『ドラゴンボール』路線にシフトしていったわけですね。ちなみに鎧を身につけたウルトラ戦士というと、内山まもるさんの『ザ・ウルトラマン』に登場するメロスや『アンドロメロス』におけるゾフィーが前例としてあったと思うんですが、これらもイメージソースのひとつだったりするんでしょうか?

瑳川:メロスは意識してなかったですね。彼らの場合、素性を隠すというところがポイントだから、ほぼオールプロテクターだったじゃないですか。でも逆に、こっちはちゃんとウルトラマンやセブンだとハッキリわかったほうがいい。そもそも騎士ガンダムや武者ガンダムの文脈から来てる企画ですからね。SDものの魅力は、やっぱり元ネタがわかるところにあると思うんです。なので、それこそ青銅聖衣(ブロンズクロス)みたいに肌が露出してるプロテクターがいいよね、と。あと、ウルトラマンは元々強いから、どうしてプロテクターを着なくちゃいけないかロジックも必要だよねということで、カラータイマーを保護するという誕生の由来を考えました。ただ、内山先生のウルトラ漫画の影響自体は受けてまして、明らかに口とかの描き方が一緒ですね(笑)。

―本来、複雑な面構成で造形されているウルトラマンの口が、人間のように柔らかい感じで描かれているんですよね。

瑳川:まぁ、最初に僕が描いたカードデザイン用のラフが、内山顔してたっていうことなんですけど(笑)。これは漫画になるとき、栗原仁先生にも伝えてます。あと、歴代ウルトラマンが出てきて、夢の共演を果たすというところも、内山先生のウルトラ漫画のノリがベースになってますね。

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