interview

僕らのウルトラマンはそこにいた

僕らのウルトラマンはそこにいた

―出口さんは82年、山崎さんは84年生まれとのことで、いわゆる『激伝』直撃世代ですよね。当時のウルトラ最新作といえば、80年から81年にかけて放送されていた『ウルトラマン80』でした。

出口:僕らは『80』に間に合わなかった世代なんですよね。子供の頃、祖母にスペースマミーのオモチャを買ってもらった記憶はあるけど。

山崎:『80』以降、テレビのウルトラシリーズは16年間作られなかったんだけど、その時期に少年時代を過ごしたのが僕らの世代。だから、大概の人間にとって、心のヒーローといえば、ウルトラじゃなくて東映モノ……仮面ライダーBLACKだったり、レスキューポリスだったり。

出口:絶対そうなりますよね。僕も、最初にハマッた特撮は『宇宙刑事シャイダー』ですもん。うちの母が、シャイダー役の円谷浩さんのことが大好きで(笑)、お祝い事のたびにシャイダーのソフビや変身セットを買ってくれてたんです。あと、両親が共働きだったこともあって、ひとりで留守番することが多かったんですよ。そんなとき、親から渡されていたのがウルトラ怪獣の図鑑で、これはもうボロボロになるまで読んでました。

山崎:一緒、一緒。小学館の『ウルトラ怪獣大全集』とケイブンシャの『全怪獣怪人大百科』は、背がバッキバキになっても肌身離さず持ってましたよ。当時、1回も観たことない番組の怪獣怪人のデータまで暗記してたもの。「グドンはツインテールを喰い、ネロギラスはグドンよりも強い……なるほど」みたいな(笑)。

出口:まず怪獣ありきなんですよね。それと当時、早朝とかの再放送だけじゃなくて、今の『新ウルトラマン列伝』みたいな選り抜きモノもあったじゃないですか。

山崎:朝とか夕方に放送してた帯番組とか、それをまとめた総集編ビデオの『ウルトラビッグファイト』とか。

出口:そうそう。だから、きちんとシリーズ全体を通して観るというよりは、そうやって美味しいところっていうか、怪獣の出てくる部分をかい摘んで観てた感じですね。

山崎:夕方にやってた『ウルトラ怪獣大百科』は、青野武のナレーションが泣かせるんだ。曰く、「今日から君も怪獣のプロだ」。何だよ、怪獣のプロって!(一同笑)

出口:懐かしいなぁ! その先の人生において、まったく役に立たない知識を詰め込まれましたね。あそこでね。

山崎:でも、あのときに得た知識でメシを食わせてもらってるようなもんだから、青野武の言ってることも、あながち間違ってなかったのかもしれない。確かに、今の俺は……怪獣のプロだ(笑)。

出口:ははは、確かにそうだ。そういう意味では、僕も近いですね。怪獣好きが、微妙に仕事にも影響してる(笑)。

―ちなみにウルトラに関する一番古い記憶……ファーストコンタクトは憶えてらっしゃいますか?

出口:もちろん! 『ウルトラマンA』のサボテンダーの回です。トラウマもんですから。最後、劣勢に立たされたサボテンダーが丸まって逃げるんですけど、それをエースが……サーキュラーギロチンだったかな。ズバッと空中で十字に切り刻むんですよ。「とんでもないものを観てしまった!」って、その日は眠れなくなっちゃった(笑)。

山崎:くす玉みたいに臓物を撒き散らして死ぬんですよね。臓物といっても、見た目は綺麗な粉なんだけど(笑)。

出口:それまで観てきたヒーロー番組って、わりとヒロイックに敵を倒すものばかりだったんですよ。宇宙刑事もレーザーブレードで戦うけど、怪人の四肢を切断したりはしないじゃないですか。だから、「ウルトラマンは怖い!」というのが第一印象。

山崎:僕も、2代目バルタンの回がファーストコンタクトだったんでわかります。バルタン星人、頭から真っ二つにされちゃってね。「これは何事だ!?」と(笑)。ただ、僕は怖いというよりも、あのオーバーキル感が病みつきになっちゃった。

出口:僕の場合、『ウルトラセブン』のキングジョーの回を観たとき、セブンがすごくカッコよく見えたんですよね。そこから一気に好きになっていったというか。

山崎:キングジョーにやられっ放しだったのが、逆によかったのかな。明らかにセブンがやり過ぎちゃってるゴーロン星人の回とか観てたら、「やっぱりウルトラは怖い!」ってなってたかも(笑)。

―リアルタイムのヒーローとのギャップを感じつつ、ウルトラはウルトラとして楽しまれていた感じですね。

山崎:ええ。ちゃんと現役感のあるコンテンツでしたよ。定番のソフビ人形はもちろん、ビックリマンブームからの流れで、子供たちの間ではSDキャラが大流行してて、SDウルトラマンを目にする機会も多かった。カードだのシールだの指人形だの。

出口:ホント、そういう時代でしたよね。ガンダムもSDだったし、ライダーもSDだったし、自分の好きなヒーローは、どれもこれもSDになってました。

山崎:ガンダムなんて、SD体型のほうが基本にあって、本来の等身のガンダムのほうがイレギュラーという認識だった気がする。だから、『超闘士激伝』が始まったときも、すんなり馴染めたというか。

出口:むしろ僕らのスタンダード。武者頑駄無や騎士ガンダムと同じように、我々の追うべきウルトラはこれだと。『激伝』なんだと。もちろん、自分たちの世代向けのガンダムとして『Vガンダム』や『Gガンダム』が作られたように、ちゃんと新作ウルトラを作って欲しかったという気持ちもあります。でも、決して不在ではなかった。僕らのウルトラマンは、そこにいてくれたと思ってます。

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