interview

「激伝」が繋いだウルトラマンの系譜

―そもそもカードダスの企画として始まったとのことですが、実際にはガシャポンのほうが活発的だったと思います。

瑳川:カードダスのほうは弾数が続かなかったんですが、ガシャポンは非常にヒットしましたね。結局、ガシャポンの漫画ということで連載が続いていたので、相当な売上げだったと聞いてます。全盛期には、騎士ガンダムと『ドラゴンボール』に次いで、『超闘士激伝』がナンバー3になったことがあったくらいらしいですし、そういう意味では“騎士ガンダムに匹敵する企画”っていう発注通りのものができたんじゃないかと。

―ヒット商品の余裕だったのか、さり気なくニッチな怪獣もラインナップされていて、そこがまたマニア候補生の怪獣少年の心をくすぐるポイントだったような気もします。ギロン人をアリブンタに乗せられたり、円盤生物の詰め合わせのセットがあったり。

瑳川:そこは明確に意図していたところですね。ウルトラマンと強いキャラには、プラ製の装鉄鋼が付いてるわけですけど、それ以外の塩ビ人形だけのキャラもハズレだと思って欲しくなくて、それで合体したり、武器を持たせられるようにしたりと遊べるものにしてたんです。もちろん、ウルトラファンとか怪獣図鑑を読み込んでる子供に向けて、どう考えてもソフビ人形とかになりそうにないヤツを入れておくと、きっと喜んでもらえるだろうという思惑もありました。で、そんなマイナーな連中に関しては、漫画で面白いキャラクターとして描いたり、ちゃんとグラビア記事でバックボーンを紹介するようにしたり。バンダイの『激伝』の担当さんは、のちに『ウルトラマン』のガシャポンHGシリーズを立ち上げる人なんですけど、こういった変わり種が、充分にガチャガチャを回す動機になり得るんだということをわかってくださって、それでHGシリーズにも1体か2体、いつも変なヤツが入ってるんですよ(笑)。たとえば、闘士ヤメタランスとササヒラーを入れようとしたとき、「なんですか、こいつ!?」って訊かれまして、「これこれこういうヤツなんで、『帰ってきたウルトラマン』を観てください」と。そしたら、「ヤメタランス、すげー面白いですね!」なんて盛り上がって、後年のHGシリーズでも彼らがラインナップされることになったという(笑)。でも、“怪獣消しゴム”に端を発するガシャポンの商品ですから、こういう売り方は正解だと思うんですよね。

―70年代後半から80年代前半にかけて大流行した怪獣消しゴムは、様々なメーカーから発売されていたこともあって、信じられないくらいマニアックな怪獣まで商品化されてますもんね。あと、『激伝』のガシャには、ヤプールコマンドやメタルモンスみたいな複数体あっても困らないキャラクターも含まれていて、ここにも時代の先取り感がありました。

瑳川:ああいう雑兵的なキャラは、いくらあっても嬉しいということで、HGシリーズの『仮面ライダー』にも戦闘員が入ったりしてますよね。後々になって、すごい感謝されましたよ。「『激伝』をやれてよかったです。HGにもすごい役立ちました」って。

―HGシリーズのヒット以降、彩色済みのガシャポン人形は当たり前のものになりますけど、当時はすごく珍しかった。『激伝』では、いち早く「フルカラークロス」という商品を出してましたね。

瑳川:あれはアニメーションをやるということで、引き出物的な感じで作ったシリーズなんですよ。実は生産数が低いことで成立していたというか、コストが高すぎたせいで、むしろ売れるほど首が絞まる商品だったんです(笑)。

―でも当時、OVA化されるくらい人気があったということですよね。『ウルトラマン80』以降、テレビシリーズが16年も途絶えていたわけですから、“ウルトラマンといえば『激伝』”という世代も確実に存在します。

瑳川:実際、後年になって、そういう話をよく聞くようになりましたよ。テレビでウルトラシリーズが毎週放映されていなかった時期、『激伝』だけが連続で見ることができるウルトラだったと。結局、『ウルトラマンティガ』をはじめとする平成ウルトラシリーズと入れ替わるようにして、『激伝』自体はフェードアウトしていったわけですけど、それまでの期間、単発の『ウルトラマングレート』や『ウルトラマンパワード』と一緒にシリーズを繋ぐことができたという意味では、きっちりやりきることができたなという想いがありますね。

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