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渡辺けんじさんインタビューその②-オメガモン:マーシフルモード-

オメガモン:マーシフルモード

デジモンデザイナー渡辺けんじさんインタビュー

 
デジモンデザイナー渡辺けんじさんインタビューの第2弾をお届け!

今回はプレミアムバンダイ限定商品として「ULTIMATE IMAGEオメガモン:マーシフルモード」の受注開始ということで、劇場版『デジモンアドベンチャーtri.』、さらにオメガモンについてお聞きしました。
■オメガモン:マーシフルモード

――マーシフルモードについてお聞かせください。

渡辺:そもそも『デジモンアドベンチャー tri.』に登場させるつもりは、まったくなかったデジモンなんですよ「またオメガモンの新しいのを作るのはヤダ!」と言っていて。むしろ、断っていたくらい。

――断っていた理由をお聞きしても?

渡辺:だって、何かって言うと、みんなすぐオメガモンに頼りたがるでしょ(笑)。だから、「もう、やめようよぉ」と。ただ、メイクーモン、つまりオルディネモンですけど、それを最後の最後に昇華させてあげるためのキャラクターがどうしても必要になって。最初はただの色替え、それこそ金色のバージョンを考えていたのですが、それではラストに相応しくないですよね。オルディネモンが自らの存在意義を否定しているキャラクターに対して、いわゆる”介錯人”であれば、オメガモンである必然性も……最後の一瞬だったらそれもありかなと思ったんです。

――“マーシフルモード”のネーミングは何か由来があるのでしょうか?

渡辺:マーシフル、いわゆる“慈悲”ですね。“介錯人”という英語はなかったので代わりに”慈悲”という言葉を使いました。ただ、まったく慈悲はないですけど。それにマーシフルモードがメイクーモンの“介錯人”になってしまったことは正しい考え方ではないと思うところもあるんですけどね。

――では、デザインも“介錯人”からインスピレーションを?

渡辺:ちょっと日本的なところを出したいなと、片腕は刀、日本刀にしたんですよ。それと同時にヒーローを意識しました。私はもともと絵を描くこと、漫画が好きなのは石ノ森章太郎先生の影響なんですよ。当然、ヒーローと言えば石ノ森キャラクター、それこそ仮面ライダーサイボーグ009とか。やはりマフラーが印象的ですよね? マーシフルの羽はそこからマフラーっぽくなっているんです。アイデア出しの頃は天使のような羽でしたが、作画監督であり、デジモンアニメーションデザインも担当した伊藤浩二さんから「布みたいなもので“ふわっ”とさせたい」とリクエストがあって。その言葉を聞いた時、「ああそうか、やっぱマフラーだ!」となりました。マフラーが羽になれば、天使の部分も残るから面白いですからね。

 
 
――デジモンに石ノ森ヒーローの影響があったなんて驚きました。

渡辺:目の下に、いわゆる“涙ライン”もありますから。それも仮面ライダー、キカイダーからなんです。涙ラインは水色に発光させて、涙が流れるイメージだったり。そこに全体が白装束のイメージなんです。でも意外と映画を観るとマフラー感なくて(笑)。「あれ、羽じゃん!」みたいな。伊藤さんが“布みたいな”って言ったのに(笑)。

――設定資料では布のイメージが残っていましたよね。

渡辺:でも、伊藤さんから布みたいと聞いてマフラーをイメージした時、できあがった気持ちがしたんですよ。「ああ、マーシフルが自分の中でまとまった」と。

――では、今回、立体化のモチーフとなった、渡辺さんのオフィシャルイラストでは、マフラー感も意識されて?

渡辺:そうそう、マフラーとわかるように。ただ、それだけに造形的にはすごく難しくなりますよね。

――そこの造形もかなりこだわった部分です!

渡辺:立体化企画段階でも「布っぽく!」とお伝えしましたよね(笑)。

 
――はい(笑)。オフィシャルイラストは造形的に難しさもある反面、すごく立体映えしそうだな、と感じました。

渡辺:実はこのイラスト、オフィシャルとしてマーシフルモードを描くのは私が最後だったんですよ。すでにユーザーさんは映画を観て、さらに『バトルスピリッツ』のコラボイラストまで公開されたあとで、すごく描きづらかったです。ただ、すでに公開済みのイラストは元の設定があまり伝わってないと思えたところもあったので、今回は全体がわかってもらえるように描いています。

――今回、立体化はしていない部分ですが、エフェクトも印象的ですよね。

渡辺:これくらいのボリュームあるキャラクターだと悩むんですよ。エフェクトを入れないと細く見えてしまうので。だから、絵的に“様”になるように加えました。

――「布っぽく」以外に立体で表現されていてほしい箇所はありますか?

渡辺:いやぁ、今まで(立体化)のこと考えるとそんなに心配してないですよ(笑)。

――本当にありがとうございます(笑)。

 
 
 
■デジモンアドベンチャーtri.
――マーシフルモードが登場した“tri. ”についてお聞かせください。
渡辺:『デジモンアドベンチャー』放送当時、子供だったユーザーさんはちょうど20歳過ぎくらい。だから大人になって、自分が欲しいものを自分で買えるようになっていますよね。今は仮面ライダーにしても、ガンダムにしても、子供の頃に好きだった作品のグッズを大人になって買うことが普通ですから。ハイターゲット向けの作品にして、よかったですよ。

――作品の立ち上げについてお聞かせください。

渡辺:前作『デジモンクロスウォーズ』から少し時間が空いてしまったので、15周年に合わせて新作をやろう!となったんです。ちょうど15周年から20周年にかけて、あらためて色々と描ける作品があったのは、私としても非常にありがたかったです。手伝っていて、面白かったですよ。

――全6部作とかなりの長編でした。

渡辺:途中で予算使い切っちゃった……とかありえないので大変でした(笑)。やはりコンテンツを作り出すのはすごく難しいし、一回道筋を作ったらそこから路線を変えるのも難しい。それこそ全6作ですから。そんななかで最後までしっかりと作れたんです。監督、スタッフ、関係者を賞賛すべきだと思っています。

――ファンからの反応はいかがでした?

渡辺:当然、いろいろな反応がありました。皆さん、思い入れが強い作品ですからね。さらにデジモンの入り口はひとつだけじゃないんですよ。それこそ携帯ゲーム機で知った人もいるでしょうし、それこそキャラクターだけ、カードだけの人もいる。あとは本当にアニメだけのファン、それこそコミックもあるので。間口が広いからこそ、いろんな思いがあって、正直、すべての想いに応えることは難しいとは思います。それでも私自身はキャラクター作りの観点から最善のアプローチを目指していて。当然、アニメーションなので、東映アニメーションさんならではの想いもあるんです。

今、デジモンに関わっているスタッフは、当時、作品のファンだった世代が主流になっているんです。そう考えると、デジモンが好きで業界に入ってきた人たちが次世代のデジモンを作っているんですから。

――新しいデジモンは当時と変わった、違うと感じたりもしますか?

渡辺:逆に新しいスタッフの手が加わって変化していくことこそが、キャラクターの成長ですよ。それこそ自分が考えないようなことも出てくるので、むしろそれが面白いですね。作品が広がっていく、広げてもらえるからこそ続いているです。

 
■オメガモンの軌跡

――オメガモンの誕生についてお聞かせください。

渡辺『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム! 』での最終進化形態ですね。当初、すでにウォーグレイモンとメタルガルルモンとがいたので、これらが活躍すればいいと思っていました。ただ、監督の細田守さんから、別々でなくて一緒になって戦えるデジモン、それこそ合体できないかと提案があって。

――デザインは、けっこう悩まれたのでしょうか?

渡辺:それこそウォーグレイモンとメタルガルルモンが合体する機構をずっと考えていたのですが、どうにもうまくいかなくて。細田さんからは「全体的にひょろっとしたような感じ」とオーダーがあったんです。さらに腕にデジモンたちの特徴が残るような感じと伝えられて、「じゃあ、両方のキャラクターの頭くっつけた感じにしちゃえ!」となりました。ただ、個人的にはキャラクターとして「“手”が欲しい……」と悩んでいて。そうしたらデジモン企画担当のボルケーノ太田さんが「大丈夫ですよ、このキャラクターきっと飯食わないですよ」とか言って。

――ボルケーノ太田さんは当時のバンダイ社員ですね(笑)。

渡辺:「茶碗持ったりしないんだから、いいんじゃないですか!」って(笑)。確かに戦うキャラクターだしと、そこから吹っ切れて、あのフォルムになりました。

――細田監督と言えば、最近は『未来のミライ』の監督でもお馴染みですよね。

渡辺:そうですね。監督の代表作として『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム! 』も入れてくれています(笑)。あと、『仮面ライダードライブ』の竹内涼真さんも、この作品を“一番好きな細田監督作品”として挙げてくれたんですよ。

―― “ウォーゲーム”は名作ですからね。では、最後に商品化される“マーシフルモード”を楽しみにしているユーザーさんへメッセージをお願いします。

渡辺:そうですね、これは楽しみですよ、やっぱり。原型データの時点で、ここまで見応えがありますからね。あと「(武器の)エフェクトはみんな自作して付けてくれ」と(笑)。SNSとかでユーザーさんが自分で手を加えてもらえるのを見るのが楽しみなんですよ。

――ありがとうございました。

 
 
渡辺けんじ

Profile

「WOW FACTORY」代表。玩具企画会社「ウィズ」のチーフデザイナーとして、「デジモンシリーズ」、さらには「たまごっち」などを作り出したクリエーター。イラストレーター、企画原作、プロデューサーなど、その活躍は多岐にわたる。

 
 
 
投稿日:2018.11.8 コメントをする

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