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いきもの大図鑑アルティメット ナイルワニ 開発日記 <その2 造形>

いきもの大図鑑担当の誉田です。

今回は究極の生きもの可動フィギュア いきもの大図鑑アルティメット ナイルワニ 開発日記<その2 造形>となります。

前回はナイルワニを発売するきっかけの話をしました。

>>>いきもの大図鑑アルティメット ナイルワニ 開発日記<その1 きっかけ>

 
今回はこのナイルワニの造形を作成して頂きました竹内しんぜんさん(SHINZEN造形研究所)を交えて、どうやってリアリティ感のあるナイルワニを作ったのか?作成に関していろんな疑問などを聞いていきたいと思います。
 
 
誉田(バンダイ)(以後、誉田):しんぜんさんの作るナイルワニはリアリティと迫力がすごいのですが、ほかにアフリカゾウなど本当に生きているようなリアリティがある作品をたくさん製作されていますよね。今回は、どうやったらあんなすごいものが作れるのか?その秘密などをお聞きしたいと思います。(笑)

竹内しんぜん(以後、しんぜん):よろしくお願いします。(笑)

誉田:しんぜんさんのナイルワニを初めて拝見した時に「絶対この迫力のあるナイルワニを可動フィギュアにしたい!」という私の思いから今回の企画が始まったわけですが、もともとナイルワニが好きだったんですか?

izooにて撮影


 
しんぜん: それまでもワニには興味は持っていましたが、とくに詳しい知識はなく、せいぜい「ワニには、アリゲーター 科とクロコダイル科、ガビアル科があって、中でもクロコダイルが攻撃的でヤバい」といったイメージがあるく らいでした。

誉田:ナイルワニを作ろうと思ったきっかけは何だったんですか?

しんぜん:ホビージャパンさんから「粘土で作る!いきもの造形」という本を出版することになったのですが、その中で制作工程を詳細に説明する企画がありました。

その企画段階で、「ワニを作るなら、やっぱクロコダイルっしょ!」というノリでクロコダイル科のナ イルワニの制作を決めたのです。

誉田:私の場合はだんごむしやスズメバチなどたくさんの虫の仕様をまとめたり原型監修を行ってきたのですが、本や図鑑などを読み込んだ後に標本を購入したりしてそれを元にして作成を依頼しています。ただ、さすがにナイルワニはそうはいかないですよね。(笑)

大きな動物ものの場合は図鑑などを元に作成されるのでしょうか?

izooにて撮影


しんぜん:静岡にある動物園「iZoo」で飼育されている2頭のナイルワニを数日 がかりでじっくり観察させてもらい、たくさんの写真を撮り、その写真を資料にしました。

誉田:実際に動物園で飼育員の方にお願いして本物を調べて作成しているとは、すごい徹底ぶりですね。だからこそ、あのリアリティが生まれたんですね。今回、いきもの大図鑑アルティメット  ナイルワニでは、前回のものを元に作成されたんでしょうか?

しんぜん:原型は当初より可動を想定したお話だったので、特段のポーズを取らない、いわゆる「素」の状態の新規原型を作り起こすことにしました。 資料は前作ナイルワニの制作時に撮りためていた、「iZoo」のナイルワニを中心に、「熱川バナナワニ園」や その他の動物園でも撮影していた様々なワニ写真も参考にしました。

izooにて撮影


 
誉田:では、今回はかなりスムーズに製作に取り掛かれたという感じですか?

しんぜん:資料は十分ありましたが、写真だけではやっぱり制作時のテ ンションが上がりません。

新型コロナウィルスの状況もあって、そうそう遠方の動物園に行くのも難しいのですが、私の地元、香川県に ある「しろとり動物園」ではメガネカイマンの仔ワニが飼育されていて、何度か直接見たり少し触らせてもらう ことができました。
動物園では、いろんな種類の動物が一度に見られます。もし目的の種類のいきものが居なくても、それに近い 動物、似た行動をする動物、それぞれを比較したり考察を重ねることで、作品のイメージが固まってきます。成 体のナイルワニを作るのが目的であっても、まだ幼いメガネカイマンに触れられるのはとても貴重な体験になり ます。人馴れした仔ワニとはいえ、美しくも座った目、ちょっと触ると怪我をしそうな鋭い歯を目の前にしたあ の緊張感は、自然の中でたくましく育った巨大なクロコダイルが、どれほどヤバいいきものなのか、実感をもって想像できるのです。一見関係が無いようなトカゲや鳥でも、意外とワニに関連づいた気づきやひらめきがあっ て面白いものです。

誉田:本物のワニに触れて作成されているので、今回もあの迫力が出せているんですね。

 
誉田:しんぜんさんは原型作成では粘土を使用されているということですが、実際にはどのように製作されているのですか?

しんぜん: 原型は主に樹脂粘土(Mr.スカルプトクレイ)を使って制作しました。
まず、ワニの骨格や筋肉を意識した芯を作ります。正中線をまっすぐ取った素のポーズで、できるだけ左右は対象に。手足は関節位置を意識して軽く曲げさせます。

 
口は内部を作る為、開いた状態で作りますが、閉口時には ちゃんと歯がかみ合うように注意します。顎関節には仮の可動軸を入れて、開閉の様子を確認しながら作ることにしました。

 
芯ができれば、粘土を付け足しスパチュラでウロコを一つ一つ刻み、いきものらしい表情を意識して、時間を かけてじっくり造形していきます。

 
 
 
ナイルワニを含むクロコダイルの特徴に、全身のウロコについた小さな「点」があります。これはピットと呼 ばれる感覚器官なのだそうです。超至近距離から、しかも目を凝らしじっと観察してようやく見えるサイズのも のなので、これを、本作で再現するとなるとオーバースケールになります。さして目立つこともない地味なポイ ントですし、情報を増やせばその分作品が「うるさく」なるリスクもあるので、この際、無かった事にしようか とも思いましたが、ある種の挑戦をするつもりで作りました。とはいえ、正直なところ、このポツポツ再現は結構面倒な作業になってしまいました…。

ピット器官といわれるディテールを鱗に入れていく果てしない作業


 
全身にウロコが付いたらほぼ完成。しかし、落ち着いてチェックしていくと、所々に気になる箇所が見えてく るので、気に入らないところを削り落とし、エポキシパテで修正するなど、何度も細かく手を入れます。「せっ かく作ったけど、やっぱり削ろう」と、時々へこみながら修正していくので、正直つらいのですが、完成度を上 げるための重要な作業です。

izooにて撮影


 
誉田:妥協されずに相当細かな作業の繰り返しがあるからこそ、あのリアリティが生み出されているというわけですね。

今回もしんぜんさんに作成して頂いた原型を見た時は、相変わらず迫力のあるものだったので胸が高鳴りました。今回は今までしんぜんさんの作品を直に見たことない人にもこの商品を届けるのが楽しみなんです。きっと、箱を開けた際にびっくりしてしまうんじゃないかなと思っています。(笑)

今回はしんぜんさん自ら彩色モデルも作成してもらいました。全身彩色されたサンプルを初めて見た時はモデルとわかっていても驚いてしまいました。(誉田)


 
今回、購入された方にメッセージなどあれば最後に一言お願いします。

しんぜん:お手元に届いた際には、ぜひガシガシ遊んでいただき、ワニの魅力にどっぷり浸っていただけたらと思います。

誉田;しんぜんさん、ありがとうございました。

 
しんぜんさんから原型を託された後は、私のほうで、それに可動を入れる作業に移ります。

可動を入れる作業に関しては次の開発日記に続きます。

可動を仕込んだ原型


 
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投稿日:2021.9.8 コメントをする

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