いきもの大図鑑 企画開発担当の誉田です。
長い開発期間を経てナイルワニを注文して頂いた方にお届けすることが出来ました。
注文を頂いた方には大幅に待たせることになってしまい大変申し訳ございません。
ナイルワニの開発日記が途中で止まった状態になっていましたので、ここで開発日記03を書いてから発送までの期間の開発をお話したいと思います。
開発日記03を書いたあと、待ちに待っていたナイルワニのテストショット品が届きましたが、ショット品を触ったときの感想は、
「これはやばいことになった。。。」
でした。
ナイルワニの可動では、今までの可動フィギュアでもあまり見かけない可動構造を入れており、
パーツを頭から尻尾の先までを鱗のディテールに合わせ細かく輪切り状に分割しており、それらすべてが可動するようになっています。
各関節では少しづつしか動かさないため大きな隙間は出ることはないですが、全身が尻尾の先まで輪切り状に分かれているため全体として動かしたときには今までのフィギュアではなかったほどの大きな可動域で動かすことが出来る構造になっており、そこがこのナイルワニの可動フィギュアのアルティメットたるポイントとなっておりました。
また、ひとつの関節を大きく動かさないという方法により、元の造形に影響をあまり与えないというメリットもあります。
ところが、ショット品では構造を確認していた原型と異なり素材が柔らかく、かつ、隙間なくくっついているいため、お互いのパーツ同士がくっつくという現象が起こってしまいました。
これは、全く想像すらしていない現象でした。
ボディのパーツが前後にくっつくことから、身体を曲げようとすると、すべての分割箇所が均一に曲がるということはなく、ほとんどのパーツがくっつているので、どこか一か所だけに力が集中しそこだけが大きく隙間が開きながら曲がっていく状況になっていました。
普通であれば、関節を0.5㎜など隙間を持たせてくっつかないようにするのですが、47箇所ありますので、それだけで23.5㎜も全長が延びてしまいナイルワニのバランスが崩れてしまいます。
そのため、隙間を開けることなくお互いのパーツがくっつかないようにしていく別の方法を検討しなければなりませんでした。
前後でパーツがくっつかなくするために、分からないレベルでパーツの内側にリブを立てて素材同士がどれだけ近づいてもくっつくという現象が起こらないように調整していきました。
その結果、前後でパーツがくっつくという問題は改善したのですが、それでも曲げようとすると、いくつかの決まった関節箇所に力が集中しそこが隙間が開きながら曲がるという現象は発生し続けました。
力が集中する箇所をなくしていくために、次に各関節をつないでいる中のピンの長さとそのボールジョイントを咥える穴の深さを調整して力が分散する修正をかけることにしました。
この作業をすることで、力のかかり方を他の場所に逃がすことには成功したのですが、修正をしても今度は異なる関節場所に力が集中してそこの関節の隙間が開くということが起こりました。
一回で問題を解決させる方法はなく、最終的に全体的に力が均一にかかるようになるまで、金型修正をしては確認を繰り返し続けました。
そして、最初のショット品を受け取ってから4か月以上をこの金型修正に時間を費やしました。そして、ようやく全身の関節が滑らかに動くようになり、元のコンセプトの動きを再現することが出来るようになりました。
そして、もう一つの問題はリアルな彩色の再現がありました。
これも金型修正と並行して質感と彩色を量産でも安定して出せる方法を検討し続けていました。
このサイズになってしまうと彩色の色を調整するだけでは、どうしてもリアルな質感が出すことが出来ずにチープな感じになってしまいました。
何度もいろんな彩色方法を組み合わせながらどうやれば、竹内しんぜんさんが作成した彩色モデル見本と同様のリアルなナイルワニの質感を再現できるかを検討し続けました。
そして、最終的にナイルワニのすべてのパーツをスプレーにて塗装した後、ひとつひとつのパーツを筆を使用し彩色して質感をだしていくことにしました。
1体のナイルワニの外側部分だけで63パーツありますので、1体作るのに、とんでもない時間をかけることになりましたが、最終的にナイルワニの質感をしっかり出すことを優先しこの方法を採用しました。
生産が始まった後も、コロナの影響で中国の工場のある地区が一斉に外出禁止になる時期が続くなどのハプニングもあり、当初予定していたお届け月からは相当遅れしまうことになりましたが、どうにかアルティメットという名前に負けることがない商品に仕上がったかと思います。
いきもの大図鑑の最上級ランクである「いきもの大図鑑アルティメット ナイルワニ」の造形、可動、彩色すべての点での拘りぬきましたが、この商品を手に取った方はどのように受け止めてもらえるか?商品の発送後は非常にドキドキしておりましたが、商品が届いた方が楽しんでいる声が届きはじめ本当に安心しました。
原型を作成して頂いた竹内しんぜんさんもSNSを見ると楽しんでいただいているようで安心しました。
今回載せているナイルワニの画像は竹内しんぜんさんがSNSに載せていたものを了承を得て使用させていただきました。
しかし、このワニのポージングのリアルさはさすがナイルワニを研究されてきたという感じですね。(笑)
今回で得た生き物系可動フィギュアのノウハウはこの後の生き物へ受け継がれていきます。
今後の新商品もぜひご期待ください。